起業するにあたり、何をしていくかを模索していた3人。自分たちでイベントを主催したりする中で、行き着いた答えは、かかわる人たちに新しい「居場所」を提供したい、という想い。後編では、起業が目的から手段に変わった3人が取り組んだ様子を紹介します。札幌ゲストハウスWAYA前編記事はこちら
当時大学4年生だった3人は、卒業後に3人で札幌に移ることを決め卒業までの約半年、
資金作りのためにバイトに明け暮れた。
努力の末に卒業までにそれぞれが100万円を貯め、3人は札幌へ渡った。
オープンまでのプロセスを共有する中で生まれる「ファン」
札幌に渡った3人がしたことは物件探しだった。
ゲストハウスで1番重要なことは、物件探しだと言われている。
立地や条件面などはもちろん、オーナーがゲストハウス用に貸し出しを許可している物件を見つけるのは難しく、一般的にゲストハウスのオーナーの多くは「こればかりは運」と語り、長ければ物件探しに1年以上かかることも少なくないという。
それを知っていた3人は、物件探しでできることは何でもやっていった。
ただ、3人が違ったのは、そのプロセスを「Sappro Guest House Story」というブログを立ち上げ、逐一発信していたことだった。
不器用ながらもとにかく必死な3人をブログで知った周囲の人からのリアクションがあったという。
必死さと想いがあるからこそだった。
徐々に現れる協力者や、アイディアの数々。
その中の一つにあったのが「商店街の理事長さんに連絡をしてみたら空き店舗がみるかるのではないか」というものだった。
さっそく連絡をとるも「若い人の力はいらないから」と拒絶されることもあったという。しかし、その中の一人に「商店街には場所はないけど、私が持っている空き家があるからそこでどうだろう?」と物件を紹介してくれる人がいた。こうして札幌にわたってから1か月、異例の速さで物件が決まる。3人の想いと行動が生み出した成果だった。
物件は築43年の古民家。大規模な改装が必要だった。
その改装の様子も、今までと変わらずにオープンまでのプロセスを共有することを大切にした3人。
1人1人をとにかく大切にした3人。どれだけ忙しい時でも、手伝いたいと来てくれる人がいれば、自分たちの想いを時間をかけて丁寧に説明していった。
この取り組みが更なるつながりを生み出し、平日にも手伝いに来てくれる人が来るほどに協力者が増え、オープンまでの協力者は約200人になった。
ついにゲストハウス「WAYA」オープン
2014年11月1日にオープンすることが決まったWAYA。
その約1か月前の10月4日に、協力者や商店街の方、家族を招いてオープニングパーティーを行った。参加者は、約100名にのぼった。
すべての人が心の中で「ただいま」と言える居場所をつくる。
その理念が結実した瞬間だった。
オープンしてからは好調だった。
それは、3人がゲストハウスを訪れる人たちとの”つながり”を大切にしていたからに他ならない。あっという間に口コミは広がり、年末には連日満室が続いた。
その後、1階部分を改装しバーを併設してからは毎晩のパーティーは落ち着いたが、
今でも変わらずバーを中心に連日”つながり”が生み出され続けている。
観光客は、何のために観光するのか
まちづくりというワードを聞いたときに連想されるものの一つに「観光客の増加」というものがある。
人が旅をする理由は多種多様だ。例えば観光地を訪れることや、名物を食べること。ゲストハウスWAYAは、そこに「会いたい人がいるから」「帰りたい居場所があるから」という要素を付け加える。
近くに2号店のオープンを控え、躍進が止まらない3人の挑戦にこれからも目が離せない。