なぜ残酷マラソンが口コミや紹介がたくさん生まれているのか?そこには、地域密着の取り組みがあった!

前回までの話
ランナーの要望、そして地域住民たちの要望を取り入れ、より地元の地域住民を巻き込むために、大幅なコース変更をして新しく生まれ変わった残酷マラソン。後編は、地域とマラソン大会をつないできた地域密着の取り組みを紹介していきます。みかた残酷マラソン前編記事はこちら

コースの変更で自然とマラソン大会に参加する住民が増え始めた!

加納
コースが変更されて、変わったことはありましたか?
久保井
うーん、やっぱり、住民たちはすごく喜んでくれましたね。今までよりも、マラソン大会に関わりやすくなったよ、って。
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加納
それは、一長距離ランナーの私にとっても、マラソンに興味を持ってくれる人がいることは嬉しいです。でも、自分たちが生活している道や空間にたくさん人が来ることに、抵抗もあったんじゃないですか?
久保井
いや、実は全くその逆だったんです。本来、特に田舎の人、少なくてもこの小代の人たちは、自分たちが生活している地元に、外からたくさん人が来てくれることは、本当に嬉しいことだと思っています。むしろ、もっと、もてなしたい!という気持ちが自然と湧いてくるもんなんです。
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久保井
そもそも、過疎化が進んで少子高齢化も進んでいるこの地域に、こんなにもたくさん外から人がくることは、ある意味でお祭りに近い。普段、自分たちが生活している場所に、ほとんど人通りがない道なのに、年に一日だけ、数千人って人が一斉に走る景色に感動してくれた人もいたくらい。きっとこれを見たいがために、毎年待ち遠しく待ってくれている方も多いんじゃないかな?

実際に、マラソン大会に参加していた住民に話を聞くと、「毎年この大会が来るのが今では待ち遠しいんですよ」と答える方もいらっしゃるくらい、住民たちは残酷マラソンを、町の風物詩のごとく心待ちにしているようだ。

住民たちが自然と溢れ出てくる「もっともてなししたい」という気持ちから生まれた様々な取り組み

とにかく残酷マラソンは、名前とは打って変わって、人の温かみを感じるほっこりするマラソン大会だ。
その人の温かさを求めて走りに集まるランナーも多く、自然と口コミや紹介が増え、残酷マラソンを毎年楽しみにするランナーも増えている。その温かさは、何か外的なもので作られたものでは決してなく、どこかぎこちないかもしれないけれど、内側からあふれる想いによって生まれたものであるから、支持されているに違いない。

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大会の給水所とは別に、個人で出している給水所?!

加納
確かに、地方のマラソン大会でもこれだけ人が集まっているのは珍しい方ですよね。私もレースで走ってみて、まずその人の多さにびっくりしました。
でも、それ以上に、沿道の応援の人たちや、給水所でランナーである私たちを応援しようとしてくれる姿が印象的でした。
久保井
そうですね、給水所は、なるべく集落ごとに運営しやすいように、だいたい集落がある場所に設置をしました。しかも給水所ではないところ、つまり、個人的に給水や捕食、中には手作りのシャワーを用意したりくれていて、大会の名物になってきているのもありますね。
加納
確かに、コースにはなかった給水ポイントもありましたね。笑

久保井
他にも、コースの途中で、町の住民たちによる路上ライブ会場もありますよ。笑
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地元の高校生が真剣に考え、大会を盛り上げている

さらに久保井さんは、より強い気持ちで想いを語ってくれた。

久保井
何と言っても特色のないど田舎ですが、人恋しさはどこにも負けていない。だからこそ、来てくれるランナーには、一番の自慢の「人」を見てもらおうと思って、試行錯誤して。最終的には高校生の必要さにたどり着きました。
加納
高校生たちたくさんいましたね。スタートの沿道応援にも、給水所にも、ゴールにも。大会の設営なども携わっているみたいですね。

久保井
そうなんです。数年前から、地元の村岡高校の高校生たちが授業の一環として運営を一緒にやってくれるようになりました。高校生である自分たちが、地元に来て懸命に走っているランナーたちに何ができるかを考えて行動してくれているんです。
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久保井
その一つが、給水です。コースは残酷ですから、(笑)高校生たちがきっとここに給水があると良いよね、と運動部の子たちは自分でコースを走って、その感想を元に場所を考え、自分たちで設営をしてくれています。中には、よさこいソーランを踊ったり、応援団が本気で応援をしたり、吹奏楽部が沿道で演奏したり、最後のゴール前でハイタッチをしてランナーたちを励ましたり・・・本当、心強い存在です。
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このように、とにかく残酷マラソンは、走っていても沿道にたくさん人と出会える。
マラソン大会に来てくれるランナーをもてなしたい、歓迎したい。そんな想いが24kmのコースにあふれているようだ。

こうした地域密着の取り組みがあって地元の住民たちも楽しめて参加できる大会だからこそ、ランナーも走っていて気持ちが良い。
結果、何度も走りに来たい、コースはきつくても住民たちに会いにきたい、というファンが多いことにも納得できる。

マラソンの良さをもっと広めたい。それにはやっぱり完走をさせること

また、久保井さんは大会主催者として、また、マラソンの素晴らしさを広めたい一人として、強いこだわりも持っていた。

久保井
マラソン大会は、まずスタートさせること。そしてゴール、つまりは完走させることだと思うんです。そこで初めて走る喜びとかを感じてもらえる。そのために、例えば制限時間を4時間としているけれども、時間を過ぎても最後の一人までゴールを待ち続けるし、体調が悪いとか時間がかかるという人は、アーリースタートとして、スタート時間をずらしてスタートも認めています。
加納
確かに、今年も何名かスタートの9時ではなく、8時からスタートしている方もいらっしゃいました。
久保井
過去こんなこともありました。レース中に体調が悪くなってリタイアした人がいたけれども、大会が終わった別日でも、リタイアしたところから完走を目指して再スタートしたい、と。もちろん彼を、村をあげて応援するし、完走したらみんなで喜ぶ。中には、障がいのある方で、1年で半分を走り、2年かけて完走される方もいます。もちろん、これも立派な完走に違いありません。これは、小代のように田舎で普段生活をしている道を走るコースだからこそできることかなって思っています。
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加納
そんな大会はなかなか聞いたことがないですね。笑 完走へのこだわりはどこから生まれたんですか?
久保井
一番は、ホノルルマラソンの影響が大きいです。スタートに並んだすべてのランナーをゴールさせて、全員にゴールの感動を与える信念を、自分たちでもやりたいなって思ったのがきっかけですね。
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完走へのこだわりが強いからこそ、完走した人をお祝いする取り組みも

久保井
ホノルルマラソンを見習って、完走者には毎年完走、Tシャツを配っています。これは残念ながら、参加賞ではなく、完走賞。たった一枚のTシャツですけど、これがまた完走へのモチベーションにつながっている人もいるようです。
加納
完走といえば、コースの途中、完走した人の名前がある木が植えられていましたね。
久保井
過去15回完走した人には、コースの途中の林道沿いに完走した方の名前入りのプレートと共に木を植えています。これ目当てで毎年来てくださる方もたくさんいます。残酷なコースだからこそ、完走する喜びも人一倍大きい。それは町を上げてお祝いもしたいなって思っています。
加納
私は、あと14回完走しないといけないですね・・・汗
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これからも地域密着のマラソン大会として、地域の魅力を発信していきたい

加納
最後に、来年25回の節目を迎えるみかた残酷マラソンをどのように盛り上げていきたいですか?
久保井
まずは、今年以上にたくさんのランナーたちに満足してもらって走ってもらう環境を作ること。そして、何より、この香美町や小代の魅力をマラソン大会を通して発信していき続けたいと思っています。そのためにも、現状に満足せず、また新しい取り組みにも挑戦していけたらと考えています。今年は、前日に、招待選手による講演も開催しました。加納さんにも話していただいて、非常に盛り上げって好評でした。ぜひ、加納さんも来年も出場して、優勝を目指してほしいです!
加納
私も、盛り上げられるように頑張ります・・・笑
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コースは残酷でも、人の温かさを存分に感じられるマラソン大会「みかた残酷マラソン全国大会」。
地域の「人」が一番の商品でもあるこのマラソン大会は、これからの新しいまちづくり・地域活性化の取り組みとしても、ますます注目をしていきたい。

みかた残酷マラソン全国大会公式サイト

第24回みかた残酷マラソン全国大会 写真ギャラリー

インタビュアーマラソンタレント加納由理のプロフィール

加納由理(かのうゆり)
公式サイト:http://kanoyuri.run

公式サイトよりプロフィール引用

兵庫県高砂市出身。私立須磨女子高等学校を経て立命館大学経済学部に入学。陸上競技女子トラック長距離種目で無類の強さを誇りチャンピオンとして数々のタイトルを獲得。 卒業後、資生堂に入社し、横浜国際女子駅伝では、日本代表チームの一員として最長区間を区間新記録で走り、優勝に貢献。全日本実業団女子駅伝でも、最長区間を走り、資生堂を初優勝に導く。自身初マラソンとなる大阪国際女子マラソンでは3位になり、世界陸上女子マラソンの補欠に選出。その後、北海道マラソン優勝や名古屋国際女子マラソン優勝など数多くの実績を作り、ベルリン世界陸上の女子マラソン日本代表(7位)や香港東アジア競技大会ハーフマラソン(銀メダル)など国際大会でも活躍を納める。 2014年以降は実業団を一線は退きつつも、「生涯ランナー」を掲げ、ランニングを通して、「運動する喜び」や「続けることの大切さ」などをランニングイベントやランニングスクールの主催や協力を行っている。また、学校やビジネス団体向けにも講演を行うなどでも教育活動にも積極的に取り組んでいる。

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ABOUTこの記事をかいた人

Kento Tanaka

まちづくりラボ運営チーム、編集長。北海道出身(1991年生まれ)。東京のベンチャー企業で、企業のWebマーケティングを中心に、企業の採用コンサルティングや旅館の再生などに携わり、その実績は超有名大手企業からベンチャー企業まで多岐にわたる。2016年に地元の北海道で会社設立。若き道産子起業家として、北海道、そして日本の観光を発信している。